展望台へ


3月半ばに暖かい日が続いたことで、積雪が急速にとけはじめている。
雪遊びシーズンもそろそろ終わりである。

今年最後のスノーシューは、私達のお気に入りの場所へ。




この日は、カナダから一時帰国している妹を連れてのスノーシュー。

普段山歩きをしない彼女である。
だから「平らな湿地をメインに歩き、ちょっとだけ登った所まで・・・」と考えていた。

ところが、前を行く彼がいつもと違うルートを歩き出した。

湿地を横切らずに最初に尾根まで上がり、その後は尾根づたいにのんびり歩くつもりのようだ。

尾根まで登りきると そこには凍結した桧原湖とその向こうに磐梯山、なかなかの景色である。




妹はここで十分満足しているようだったが、私達はこのルート最後に待っている素晴らしい景色を知っている。

できればそれを彼女に見せたいが、 山歩きをしない彼女には到底無理だと思っていた。




「とりあえず、歩けるところまで・・・」と言って彼が尾根道を上に進み始めた。

これが彼女にとって「ハードな一日」の始まりとなった。


山歩きをしない彼女、もっと早く「ダメ〜!もう歩けな〜い!」という状態になると思っていた。

が、「キツイ!」と時々言いながらも確実に登っている。

先行している彼は、私達姉妹の邪魔をしたくないと考えたのか、かなり前方を歩いているようでその姿が見えない。


 

私は止めるタイミングを逃して、ズルズルと登り続けた。

彼女が「もう限界かも?」と言った時、もう目的地はすぐそこ・・・という所まで来ていた。


 

「ここで引き返そう」ということになり、とりあえず 風があたらない所で休憩&ランチ。

お腹に食べ物が入り、ちょっと休憩すると彼女が言った。
「少し元気になったので、頑張ってみる・・・」 と。

せっかくここまで来て、 目的地直前に引き返すのは もったいなかった。
・・・というより、このまま引き返してしまうと、とにかく「ツライだけの思い出」 で終わってしまいそうだった。

「頑張る」 と言ってくれた彼女に 心の中で感謝し、ゆっくりのペースで歩きだした。


展望が開ける尾根に出ると、ちょっと笑顔で彼女が言った。
「景色が良ければツラクない・・・」

やがて目的地の展望台に到着した。




ここからの眺めは、私達のお気に入りである。
だが疲れていた彼女とっては、景色を楽しむゆとりはなかったかもしれない。




「結構ハードな歩きだった・・・、ごめんね。」


下りは快適だった。


  

雪の季節はどこを歩いてもいいし、カナダでスノーボードを楽しむ妹は傾斜を怖がらず、時々滑って転んでもそれを少し楽しんでいる様子。

ちょっとスリリングな場所も、それを趣向に変える余裕すらあるようだった。

登りの時にも、雪上にはカモシカの足跡がいっぱいあった。
この山にはたくさんのカモシカがいるようだ。

下り途中、周りを眺める余裕が出てきた妹が「あっ、これ!!」と言って立ち止まった。


 

カモシカの足跡の中にコロコロの糞が・・・

私も初めて見たカモシカの落し物である。彼女がいなかったら見逃したところだ。
「アリガトね〜!」

そして、こんなうれしい出会いも・・・


 

最後は平らな湿地、景色を眺めながらのんびり歩く。




 

カモシカに静かに見守られているような山歩きができる




魅力的な場所だ。

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