晩秋の中吾妻山麓へ [吾妻山神社詣]
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「道、どうやら間違ったみたいだね」
二人の歩兵を従えた隊長がつぶやいた。
「そうねぇ、こんな藪はおかしいもの・・・」
隊長とはうちの彼で、歩兵はご近所のTさんと私である。
「あれ、全然違う方向に来ちゃったよ 」
GPSで位置確認した隊長が苦笑い。
普通の人なら道が笹薮に変わった時点で前進するのを躊躇するが、そこは藪好きの隊長のことである、なんだかルンルンと足どり軽く突き進んできたのである。
時計をみれば、もうお昼前である。
これから引き返して再度正規ルートを行くには時間がなさすぎる。
「少し戻って、今日はランチだけして帰ることにしよう。 」
ルートを間違えた地点に戻り、そこで ランチタイム。
目的地には辿りつけなかったけれど、川の流れる音を聞きながら紅葉をおかずにランチすれば、今日の藪こぎトレッキングも満足で楽しい思い出に・・・
「久々の藪こぎ、楽しかったなぁ〜!」
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さて、仕切りなおして翌週の10月31日、再度 トライ!
吾妻山神社詣を希望していたTさんとスケジュールを調整して一緒に再挑戦したかったのだが、11月に入るといつ雪が降ってもおかしくないエリアである。
今日が今秋最後のチャンスかもしれない。
Tさんとはまた来年出かけるとして、今日は隊長と歩兵一人で中津川渓谷レストハウスを 出発。( AM 6:50 )
磐梯吾妻レークラインのレストハウスからは遊歩道を渓谷へと下りる。
ここから下流域は昨年の今頃歩いた所。
今回は上流に向かってすぐの橋をくぐり抜けて林道へ上がる。
やわらかい朝光の下で林道をしばらく歩き、『吾妻山神社』標識で林道とお別れ (AM7:35)
すぐに唐松川を渡る。(AM 7:40)
先週は渡渉した後すぐにルートを間違えた。
その時は紅葉真っ盛りで、その美しい景色にうっとりしたり写真を撮ったりしていて、正面の木につけられている文字が消えかけている標識があるのに気がつかなかった。
そのまま、沢沿いにある林道らしき広い平坦道を進んでいってしまったのだ。
今回はここからまっすぐに杉林の斜面を登っていく。
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最初は杉林だが、少し登るとすぐにカラマツ林に変わった。
ここからしばらく延々と カラマツの中を歩く。
広大なカラマツ植林地である。
「先週間違って歩いた林道は、きっとここの植林をするためのものだったんだね。」
カラマツの黄葉もそろそろ終わりですでに多くの葉が散っていたが、上の方では 太陽の光を受けて黄金色に輝いていた。
見通しのよい明るいカラマツ林を快調に進み、最後はかなり急な坂を登りきって
カラマツ林は終了。
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地図とGPSで位置確認 (AM8:40)、
ここからはほぼ横ばいの標高で進むことになる。
立ち止まって少し休憩していると、後ろから単独の男性がやってきた。
今日は人に会うと思っていなかったので、後ろから人が来たときには驚いた。
軽く挨拶を交わした後、男性は私達を追い越してそのまま歩み去った。
私達もちょっと休憩した後、男性が去った同じ道を進む。
葉っぱが落ちた明るいブナ林は、足元は落ち葉でふっかふか・・・
このブナ林、たまに大きなブナもあるが、大半は細い若木ばかりだ。
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そのうちブナの中にオオシラビソの木が混じるようになり、やがてうす暗いオオシラビソの森になった。
杉に始まった林はその後カラマツに変わり、そしてブナ からオオシラビソへ・・・
展望がほとんどない森だが、樹木の変化が実に劇的で、そういう意味では飽きがこない。
「オオシラビソの森では少し道がわかりにくい所もありますが、赤テープがあるのでそれを辿れば大丈夫です」
先程の会った男性の言葉通り、森の中にはピンク色のテープがあちこちに。
登山中に所々で見かけた『←議場 』の標識。
「『ぎば』って何かな〜? 後で先程の男性にきいてみよう!」
そんな疑問も抱きつつも、足は目的地へ一歩ずつ近づく。
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しばらく薄暗い森を歩いていたら、『おんば様』の場所に到着した。(AM 10:05)
着替え用なのか、近くの木には2着の赤い衣装が・・・
薄暗い森の中なので少し不気味かと想像していたが、そのやさしい表情にホッとした。
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おんば様を過ぎると、道は下りになる。
「本格的に道が下っているから 、目的地はもうすぐだね。」
「せっかく登ってきたんだから、こんなに下るのはイヤだな〜」
「帰りにまた登りがあるなんて幸せだな〜って思わなきゃ!」
そんな会話をしながらもどんどん下へ・・・。
しばらくすると下から沢音が聞こえ始め、先行する彼の姿が私の視界から消え、誰かと話す声が聞こえた。
そして微かな硫黄臭がしてきた・・・と思ったらいきなり視界が開け、彼が先行していた男性と話をしていた。
そう、ここが本日の目的地『吾妻山神社』、湧き出る温泉は硫黄泉のようだ。(AM 10:35)
ここまでの安全登山を感謝し、3人一緒にもう少し下にある沢まで移動、そこでランチ。
標識にあった『議場(ぎば)』が地名で、昔集落があったことも教えてもらった。
こんなマイナールートを好む人達である、話は当然中吾妻山頂へのルートに及ぶ。
ランチの後、彼は沢の上流へ、男性は対岸へルートの探索に。
「この先は藪こぎですね〜」「行くなら残雪期ですかね〜」
素人の私には雲の上の話だ・・・笑
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しばらく山雑談をした後男性が腰を上げた。
「ではお先に・・・」「お気をつけて〜」
そして私達も片付けをして帰路に着く。 (AM 10:30)
オオシラビソの森を抜け、ブナ林を通り抜ける。
急な下りがあるカラマツ林に入る前に、ブナ林で軽くティータイム。
午後1時半を過ぎ、影が長〜く伸びてまるで夕方のような雰囲気である。
帰りはのんびり、紅葉も楽しんだ。
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風景を楽しみながら、中津川レストハウスの遊歩道まで戻ってきた。(PM 3:15)
一週間前は紅葉狩りで賑わっていた川原、今日は観光客も少ない。
登山ルート上には展望を楽しめる所があまりないが、紅葉シーズンの最後となるカラマツの黄葉と足元のふかふか落ち葉を満喫できた一日だった。
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